事業計画と向き合うこと!

起業前に検討しておくことは、店舗の場所、店内レイアウト、取引条件、資金の調達、人材の確保、収支計画等、多くあります。店舗の場所やレイアウトは、起業を意識した時からイメージすることが多いため、準備不足になることはありません。一方で、資金の調達、取引条件、人材の確保、収支計画等は、起業が実現する直前になって正式決定となる事項も多いため、起業直前に修正したり、起業後に改善が必要となるケースがあります。なかでも、「そもそも事業を、会社で行うのか、個人で行うのか」は、直前で、決定に迷う項目のひとつです。

日本には、約261万社の会社が存在します(国税庁標本調査結果(会社標本調査結果(平成26年))。業種別法人数の構成比を見ると、サービス業 (26.9% )、建設業(15.9%)、小売業(12.8%)の占める割合が大きくなっています。いわゆる個人事業者は、この数に含まれませんので、会社と個人事業者を合計すると、国内には膨大な事業者が存在することがわかります。起業した場合、この膨大な事業者に加わって活動することになります。

手続き面では、会社の場合、会社名(○○株式会社)を決めて、会社を設立(有料)して、財務状況を作成(決算書)する必要があります。個人の場合、商号や屋号(○○商店)を決めて、開業の届出(無料)をして、財務状況を作成(帳簿)する必要があります。事業を運営することは同じですから、整備する内容も同じです。しかしながら、手続き面だけをみると会社を設立するほうが、事務負担が大きいといえます。

この事務負担を踏まえたうえで、どちらかを判断するためには、事業計画が重要になります。確認する箇所は、「5年後の事業計画はどのように記載しているか。」です。

当初の取引先との取引量を拡大させて、売り上げを伸ばしているのでしょうか。それとも、新しい顧客と取引を始めて、2店舗目出店等として、商圏を拡大しているのでしょうか。前者は、職人などの専門工事業等が多く、時間の経過とともに、取引先との信頼関係が密接となって実現しますので、日々の品質の維持・向上が重要です。後者は、卸売業等が含まれ、前者同様、品質の維持・向上は当然ながら、自社を広く周知して、信用を獲得し続ける必要があります。前者に比べて、後者のほうが、事業内容について、説明を求められる機会が多いといえます。

ここまでくるとおおよそ見当がつくと思います。自社の事業内容を、新たな取引先や銀行に説明するために、「事業内容、財務内容は、全国共通様式の資料で作成しています(会社の登記事項証明書及び決算書)。」という場合と、「自社で作成した独自資料で説明します。」という場合では、前者(会社)のほうが、説得力が増すことは自明です。また、東京などの大都市では、お店の入れ替わりも早いため、競争は激しく、個人事業者と会社設立済みの事業者とでは、営業のアポイントや賃貸借契約の締結でさえ、信用力の観点で、機会が少なくある場合もあります。この他にも、税制面等で会社設立済みの事業者のほうが、有利となる制度が設けられています。

これから起業する方にとって、「会社を知ってもらい、新たな取引を増やしたい。」というのであれば、会社を設立するメリットがあります。一方で、取引先をすでに見込んでいて、広く周知する必要がないのであれば、個人事業者で起業しても、デメリットは少ないといえます。また、サービス業や小売業等の取引先が一般個人である事業では、知名度という点で、信用力を補強することもできますから、”起業時点では、個人事業でスタートさせて、事業計画との整合性をチェックしながら、会社を設立したほうが、メリットがあるという場合に、事業内容を会社に移し変える。”という判断も、一考の価値があります。

会社設立の判断をする際には、事業計画と向き合うことで、解決することができます。





東京会社設立センター 吉田 栄博